入浴の事
漸くギプスが届いたところで、100%車椅子生活から歩行器の生活に変わった。
当初の尿瓶を固辞し、車椅子でのトイレの移動も断然に楽になった。
尿瓶を使わず、トイレに立つにも、涙を流しながら激痛に耐えた。
しかしながら、お風呂とは言わずもシャワーを浴びたく、浴びたくとも、入浴中はギプスを外し、砕けた腰が不安定極まりないので独りでの入浴を許されなかった。
数日は、蒸しタオルをもらい、やり過ごしたが。
真冬といえど、病室は半袖で過ごせるほどの気温である。
汗もかく。
何せ、スッキリしない。
身体の自由が利かなくとも、思考は止まらず。
自分が臭わないかも気になった。
個室ゆえ、迷惑は掛からずとも思ったが、医師も来るし、看護師も来る、見舞い客も。
そうして、入浴の付き添いを頼んだ、男性の看護師を。
女性に頼むは恥ずかしい。
かといって、男性がいい、とも思われたくなく。
それに、女性に見られて反応を起こし、それをまた見られる可能性を考えると、考え過ぎだとも思ったが、どうしても腰が引けた。
特注ギプス
実際、数箇所に及ぶ骨折をレントゲン写真で見てしまうと、どうしようもなく、、、
それまで己の2本の足で立てたものが、立つまでもなく、座ろうが、寝ていようが堪えきれぬものになった。
作業をし、トラックの運転ができていたのにだ。
総合病院に行き、前日のデータとともに紹介状を提出したところで、早速、車椅子の上の人となった。
検査へ行くにも、病室内のトイレに行くにもである。
上半身に石膏包帯で型を採った。
その1週間後、特注の胸から腰に及ぶギプスが出来上がってきた。
事故
自動車事故ではなかった。
踏み外しからの落下事故。
プラットフォームからの自殺ではない。
足場の悪い場所での踏み外しだった。
激痛、動くと涙が飛ぶようだったが、作業を続けた。
翌日の土曜日も半日、仕事をし、また日曜をゆっくり休めば改善されるとも思っていた。
ところが、、、
月曜にはたまらず、仕事帰りに職場にほど近い病院へ飛び込んだ。
尿検査の数値、レントゲン写真で、ドクターストップ。
紹介状を書くから、総合病院へ行けという。
それでも、職業人である。
翌日、仕事を片付けてから、総合病院へ。
即入院であった。